2018/07/20
大キレットにはまだ行ったことがないという新人男子の小野寺君。
それじゃあ、これからの小屋の仕事の中で、利用者の問い合わせにも答えられるわけもないので、研修ということで小屋の男子二人で北穂まで出かけてきました。(わたしも、大キレットを全部歩くのは15年ぶりくらいかな)
今日はその様子を交えて、大キレットを詳しく紹介しちゃいます!!
まずはいつもの展望台・獅子鼻がスタート地点です。
北穂まで直線距離ではたったの1.4㎞ですが、その所要時間は3時間。
常念岳方面から見ると、なだらかな南岳(右側)から大きく下り、しばらく平坦な尾根が続いたあとにひとつ盛り上がる小ピークが大キレットの中間地点・長谷川ピーク。そこからA 沢のコルまで下り、飛騨泣きを経由してボコっとした山容の北穂高岳まで至るのが国内屈指の難コースと言われる大キレットです。
ただ、ここまでであれば槍の穂先と同等レベル。この先はまだ2ランクくらい厳しい岩場が連続します。
ここまでですでに恐怖心を感じたり、スムーズに行動できない方はここで引き返した方が賢明です。
ここで振り返ると、南岳獅子鼻の岩峰が聳え立ちます。
逆に、北穂から南岳へ向かう場合はウンザリするかもしれません(笑)
ここからしばらくは小刻みなアップダウンが続く気持ちの良い岩場の稜線歩きが続きます。大キレットの中では比較的安全に歩ける岩場ですが、他の山域では危険?マークが付くような場所かもしれませんが。
小刻みなアップダウンのあとに少し長い登りが、長谷川ピークへの登りになります。振り返ると、南岳・獅子鼻とキレット底部の稜線が気持ちよく伸びています。
比較的難易度の低い南岳側が終わり、長谷川ピークからは一気に難易度の高い岩場の連続となります。遭難事故も大キレットで起きる事故のうち、7~8割はこの長谷川ピークより北穂側で起きていますので、ここからはしっかりと気を引き締めて進んでください。
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ここから先はいちいち説明するのが面倒なほど難所が続きます。
長谷川ピーク(左側ピーク)からA沢のコルまで下りるとひと段落。
広い場所なので休憩の適地ですが、北穂側は落石の危険もあるので、休憩場所の選定には十分に気を付けてください。
さて、ここからはふたたび急な登りとなります。特にA沢のコルから先は非常に浮石の多い状態です。
南岳から北穂へ向かう人は、上から石を落とされないように気を付け、
北穂から南岳へ向かう人は、下の人に石を落とさないよう、そしてスリップして自分が落ちていかないように気を付けてください。
大キレットを南岳→北穂へ向かうか、北穂→南岳へ向かうか、どっちが良いかよく聞かれますが、このザレた部分を「下るよりは登るほうが安全!」と考えれば、南岳→北穂のほうが良いのかもしれません。
そして次なる難所が飛騨泣き…
ここは動画で紹介いたしましょう。
小野寺君は20代で登山ガイドの資格を持つ若者ですから、さすがにスルスルと登っていきますが、体力・筋力の弱い人だと相当手こずりそうです。
さらにここを北穂→南岳で下ると考えた場合は、足元が見えないくらい垂直に近い岩場ですので、相当難儀することでしょう。お腹の出ているような人はさらにたいへんかもしれません。
ここも南岳→北穂へ向かうほうが良い(順ルート)とされる所以でしょうね。
飛騨泣きを過ぎると傾斜も難易度もひと段落。
北穂の山腹をグルっと周るような感じのトラバース道が続き、背後に槍ヶ岳が望めるようになってくると北穂まではあと少し。
短い鉄バシゴが出てくると北穂まではあと15分ほどです。
危険な岩場ではありませんが、ここも浮石が多く、落石の危険+下りで利用する場合はスリップの危険のある場所です。十分に気を付けて進みましょう。
お疲れさまでした。
北穂高小屋、そして北穂の山頂に到着です。
ここからは大キレット越しの槍ヶ岳が定番の構図ですね。
こうした岩場を登れる人にとっては本当に楽しいコースだと思います。
やっぱり年に一度は大キレットを含め、槍穂高縦走はしたいものですよね。
体力のある人であれば、一日で南岳まで。そして二日目にキレットを越えて、涸沢から上高地へ下山という、普通の週末一泊二日での大キレット越えも十分に可能です。
(さらに、二泊三日あれば、奥穂→西穂への縦走も可能ですね。私はこっちも大好きです♪)
ぜひ、何度も言っている人は何度でも!
まだ行ったことない人は、ぜひ技量を上げて、大キレットに挑戦してみてください。
とはいえ、まだ槍にも穂高にも一度も行ったことのない人はくれぐれもきちんと段階を踏んだうえでの挑戦をお願いいたします。
初めての槍ヶ岳でついでに大キレット!!なんて甘いところではありません。
槍も登った、奥穂も前穂も北穂も登った。「じゃあ、次は大キレットに挑戦だね」
ここはそういう段階を踏んだ人たちの来るべき場所です。
ちなみに大キレットを三回くらい行って、だいぶ岩場にも慣れてきたし…って人が目指すのが奥穂~西穂の最難関縦走路です。こちらもくれぐれも飛び級で挑んだりしないようくれぐれもお願いいたします。