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8月6日、横尾本谷右俣(注:バリエーションルートです)

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昨日の知事選の投票と、今週のヘリで荷上げする備品・食品などの購入を済ませ、今朝は朝イチから横尾本谷右俣経由で南岳へ登ってきました。

先般の本谷左俣と合わせて、登山道のないバリエーションルートですが、比較的危険の少ない沢歩きのルートです。

とはいえ、道が無いということは、普通の登山道と比べると何倍ものリスクのかかるルートです。

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横尾からは屏風岩の横を通り、本谷橋へ。

今朝もたくさんの人が行き交う涸沢への道でした。夏休みに入って、家族連れも多かったですね。

たくさんの登山者が休憩する本谷橋からいよいよ登山道を離れ、河原歩きの始まりです。

しばらくは先般の左俣のルートと同じです。

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標高2050mの二俣。

ここからは先般の左俣が良く見えますが、雪がかなり少なくなりました。

大キレットに至る左俣は6月・7月の残雪期にはお勧めのルートですが、雪が消えた8月以降は足場の悪いガラガラの岩石堆積の沢筋となり、とても歩きにくいのであまりお勧めはしません。私も夏以降はここを歩くことはほとんどありません。

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一方の右俣は初級の沢登りと言った感じの快適なルートとなります。

一般的に「横尾本谷」というと、こっちの右俣の方を言うことが多いと思います。

左俣と違い、基本的に足場の岩は安定していますが、水際では石に付着した水コケで滑りやすいので注意が必要です。

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途中にはこんな小さな滝を越える場所もあったりして、ルートファインディング能力は必要です。

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目の前に岩と格闘しつつ、ふと振り返るとさっきまで見上げていた屏風岩がいつのまにか、同じ高さくらいになってくると沢登り区間も終盤。

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二俣から約1時間ほどで、沢登り最後の滝が出てきます。

ここを越えるといよいよ本谷カールの底・通称:黄金平と呼ばれる別天地のような場所に到達です。

では、動画でこの最後の滝を登ってみましょう(笑)

この滝を越えると風景が一変して、まるで黒部五郎岳のカールのような素晴らしい光景が広がります。

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ここから先はしばらく傾斜の緩いカール底を歩くことになります。

いままでのような、ただ沢沿いを登ればいいというわけではないので、先を見据えたルートファインディング能力が必要となります。

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先日、「右俣の残雪状況」の問い合わせがありましたが、傾斜の緩いカール底にはこのような残雪がありますが、傾斜の緩い場所なのでアイゼンなどは不要です。

かえって、雪のあるほうがゴロゴロした岩の上を歩かなくてもいいので、歩きやすくて助かります。

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雪渓を過ぎると一面のお花畑となり、今日はキンポウゲやミヤマキンバイ、クルマユリにウラジロタデなどが一面に咲き誇り、実に壮観でした。

ここから横尾尾根のコルまではかなり辛い登りとなります。足元はズルズルと滑りやすいガレ場で、複数人で歩く場合は落石の危険もあります。ルート取りを誤るとなかなかに大変なこととなるので、しっかりと斜面を観察して、どこが登り易そうか、しっかりと考えて登りましょう。

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そして、辛いカールの上部斜面を登り終えると横尾尾根のコル付近で登山道と合流し、槍ヶ岳と対面です。ここからは登山道を歩けるので、「道って歩きやすいな、助かるな」とそのありがたさを実感することでしょうが、

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ただ、ここから稜線に登るまでの南岳の東壁の登りはなかなかに厳しく、直前のガレガレの斜面の登るのに筋力を使い果たした脚にはそうとうキツク感じるかと思います。

それでもなんとか最後の標高差300m分を登り詰めるといよいよ県境稜線に到着。

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ここから南岳小屋までは20~30分。最後も地味に辛い登りですが、頑張ってください。

この右俣ルート、時間的に言うと上高地から南岳までギリギリ一日でも登れる行程ですが、なかなかにタイトです。なるべく横尾に前泊したうえで臨まれることをお勧めします。

上高地からだと時間的に焦ってしまい、余裕がなくなり、少しのミスでも時間的に響いてきて、あとになって気が焦るばかりでいいことありません。特に最後の横尾尾根からの登りは疲れた身体にはそうとう時間がかかります。

そして、ここを登るのに必要なのは「総合的な山登りのセンス」ですね。そんなセンスと体力のある方はこの夏、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。