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7月18日 北鎌尾根

北鎌尾根の偵察に行って来ました。

北鎌尾根に出かけられたのは3年ぶり、一昨年は足の怪我により行かれず。昨年は日程と天気が合わず断念。

昨日久しぶりの北鎌尾根の偵察に行く事が出来ました。

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写真はP15からの槍ヶ岳。大槍の右側・孫槍・ひ孫槍・小槍がはっきりと見えます。

今日はその時の様子をご紹介いたします。

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先ずは

貧乏沢の入り口です。

ヒュッテから西岳へと向かい15分ほど行った最低鞍部の右側茶色の踏み跡を1m程登ったハイ松帯が北鎌尾根へのいりぐちとなります。

今年の貧乏沢には既に雪渓は残っていませんでした。

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左俣の牛首の滝(通称)からは豊富な水流が流れていました。

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貧乏沢下部1900m地点にあるツルツルの岩場に取り付けられたフィックスロープ。

長年の使用にて傷んでいたため新しいロープと取り換えて来ました。

大天井ヒュッテ(2650m)~天上沢出合い(1800m)。標高差850mを一気に貧乏沢を下ると、広い天上沢へと出ます。

貧乏沢と天上沢の出合いから約15分程上流へ右岸沿いに登ると、北鎌沢出合いへ着きます。

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現在の北鎌沢出合いの様子です。真っ直ぐ伸びている沢が右俣です。

出合いには幾つかのビバークサイトあり。

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左俣と右俣の合流地点ですが右俣の沢には殆ど水は流れていません。流れに沿って登ってしまうと左俣に入ってしまいます。

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右俣を登って行くとおよそ2200mにて赤岩の滝が出て来ます。

ここが最終水場ですが、秋には涸れる可能性大ですので、

上写真の左俣の合流地点にて水は補給しておきましょう。

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およそ2350m地点の沢の分岐地点があります。ここは右の沢に入り狭い沢登りが続きます。

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狭くなった最後の沢の分岐地点(2450m)はその真ん中の赤い岩稜に取り付けば、稜線はもうすぐ。

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きつい北鎌沢右俣(約700m)を登り切るとテントが1張り張れる北鎌沢右俣のコルへ出ます。

ここからが北鎌尾根の縦走の始まりです。

最初からダケカンバやハイ松の中の踏み跡の登りを上下しながら高度を上げて行くと、目の前に独標が迫ってきます。

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この独標の手前にあるのが

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天狗の腰掛

天狗の腰掛を超え岩稜を上下しながらコルに下りると北鎌沢左俣の突き上げです。

例年ですと雪渓が繋がっている7月初旬までは登る事が出来ます。

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コルに残っていた雪渓と西岳。

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戯れた岩場を登りきると目の前には圧倒的な独標が現れ、その遥か奥に槍ヶ岳が顔を出しますがまだまだ遠いですね。

今回の北鎌尾根の目的はルートの偵察はもちろんですが、ルート上に十数年前に取り付けた摩耗したフィックスロープの取り換えが大きな目的の一つでした。

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before

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after

独標の入り口、足元の戯れた斜面が危険な右へのトラバースにて、フィックスロープを張り替えました。

独標への登りは幾つかのルートを辿る事が出来ますが、今回は一般的な独標の岸壁下をトラバースしちょっとしたチムニーの下に出ます。

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この岩場は高さ5m。

左上に打たれたハーケンにはシュリンゲンがかけてありますが、あまり信用しない方がいいと思います。

この岩場を超えると小さなバンドがあり、その続きでトラバースの足跡が付いていますが、独標に行くためには上部に伸びる草付きのスラブ状の岩を登ると稜線に出ます。

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独標(2899m)へは稜線を少し戻ると着く事が出来ます。

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独標からの槍ヶ岳。

最高の天気に恵まれ、独標~P15、北鎌平から見える槍ヶ岳を写す事が出来たのは初めてと思われます。いつもはどこかで雲が発生し山頂は隠れてしまうものです。

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P12からの北鎌尾根と槍ヶ岳。

北鎌尾根はルートファイディングが重要な要素の一つですが、幾つかの岩峰は避ける事はありますが、基本的には尾根通しを登る事をお勧めします。楽しいですし危険も少ないです。

P15を大きく巻くトラバースの踏み跡が鮮明に残っておりますが、息詰まったり危険が多く止めた方がいいですね。

山頂が目前に迫る北鎌平(3000m)からは最後のガラガラの岩の登りです。

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残り180m、最後の力を振り絞って登りましょう

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そして頂上直下にある「最後のチムニー」10mの岩場が待ち構えています。これを攀じれば山頂までは10m。

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山頂の祠と一般ルートから登頂している登山者に大歓迎されますよ。

北鎌尾根は、一般登山道ではなく、自身で判断しながらルートを見つけその最後には槍ヶ岳の山頂へと通ずる、登山の原点となる場所です。

ですから体力とルートファインディングと、岩登り技術の必要なロングルートです。

自身の体力、ルートファイディングの出来る経験値、岩登りのトレーニング。全てが揃って初めて挑戦できるルートです。

先日も単独登山者の遭難死がありヘリにて収容されました。

安易な気持ちでは決して行かないで下さい。

で なければ著名な山岳ガイドをお願いして登りましょう。