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10月26日、シーズンラスト奥穂へ

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今シーズンも最終段階、稜線上が積雪で歩けなくなる前に、

奥穂の南陵を登攀し、奥穂高岳へと登頂するバリエーションルートに挑戦してまいりました。

水先案内人は我が大先輩某小屋支配人のS氏であります。

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最近は日が当たるのが小屋付近でも9時頃とすっかり冬仕様。

朝晩は水道も凍結する厳しい寒さの中での出発です。

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取りつけばもうそこは壁、慎重に足場を確認し登っていきます。

地中から染み出た水が岩の上で氷化し、表面はツルンツルン!!手がかり足がかりをさらに少なくさせてきます。

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草付きと藪漕ぎを繰り返し、トリコニ-岩峰の前まで来ると少し開けて小休止。

この時期だから多少の藪漕ぎで済みましたが、真夏にはかなり草藪漕ぎとなります。おすすめは雪の残る5月・6月と、冬枯れとなったこの晩秋の季節でしょうか。

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普段は見ることのできないアングルに感動しつつ、ここからがいよいよ気の抜けない核心部となります。

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目の前に迫るのはトリコニーの第一峰、普段は第二水源あたりから眺め、その美しい形を眺めているわけですが、

今日はその岩峰をよじ登って越えていきます! 落ちないことを祈ります。。

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通常はザイルで安全を確保しながら登るルートなのでしょうが、小屋閉め作業もあるこの時期、のんびりと登っているわけにもいかないので、フリーでどんどんと登ります。

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水先案内人は第一峰を越え、どんどん先へ 最近小屋締め作業中に腰を痛めた小生にとってはかなりのハイペース、、

しかしついていくしかありません、痛みをかかえつつも必死でついていきます。

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そして最後の核心部分を無事に通過し、見下ろせば素晴らしい眺めが待っていました

 

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清らかに青い水を滔々と流す梓川を中心に、3000m級の峰々、なんて良いとこなんでしょう、穂高上高地。

素晴らしい景色です、感動を与え続けてくれる山ですね、穂高は。

そして休憩もそこそこに、核心部を抜けた我々は楽しい岩登りの時間へ

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とにかく眼前に迫る穂高の迫力が圧倒的です。ダイナミック過ぎます。雪がついているのがまたさらに景観を引き立ててくれますね。

景色に感動しながら登っているとあっという間に南陵の頭へ

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腰痛で登れるかどうか心配しておりましたが、無事に登頂!達成感でいっぱいです。

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前穂高岳の涸沢側は雪がべったりとついていました。

吊尾根上は南面でも雪が溶けずに残っています。もう根雪になるでしょう。来週からは冬型の気圧配置で山は大荒れとなりそうです。

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帰りの重太郎新道、雷鳥広場からみた南陵。奥穂へ一直線、いやいや登りごたえのある登攀となりました。

 

最後にS氏からのメッセージです

 

奥穂南陵は約100年前、穂高岳に登山道ができる前、上條嘉門次がウォルターウエストンを奥穂へのルートとして案内した歴史あるルートです。

現代では主に残雪期(5月)の奥穂へのルートとしてクライマーに登られているバリエーションルートです。

上高地から見上げる岳沢のドン詰まりから一気に奥穂高岳へ登り詰める魅力あふれるルートではありますが、けっして易しいコースではありません。

この小屋にいて、南稜に挑み、敗れた遭難者・遺体、そして関係者やご家族と接したものとしてのお願いです。

くれぐれも未経験者の単独行だけはやめてください。少しルートを誤っただけで進退窮まり滑落してしまうところです。登山道も目印もないバリーエションルートです。雪についた先行者のトレースが正しいとは限りません。草付きについた踏み跡が正しいとは限りません。そんなトレースに付いて行ったばかりに大量遭難となった事例もたくさんあります。

くれぐれも未経験者の単独行だけはやめてください、行ってみたい人は経験者や山岳ガイドの助けを借りて楽しんでください。