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5月16日、明神岳縦走

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今日から三日間のお休みをいただき、夕方までは特に急ぎの用事もなかったので、ぐるっと遠回りをして下山してみました。

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岳沢を取り囲む、西穂・奥穂・前穂はいずれも人気の山ですが、なぜか穂高の一角に位置しながら「穂高」の名前を冠していない「明神岳」は不遇の山です。

標高は2931m、西穂の方が少し標高は低いのに、向こうはロープウェイが通じているおかげで四季を問わず、大人気の山。

一方の明神岳は登山道すらなく、バリエーションルート扱いとなっています。

とはいえ、クライマーには人気で、特に岳沢から(あるいは、岳沢への下降に)奥明神沢の雪渓が使えるこの時期は通る人も割と多くなっています。

※雪が消えると奥明神沢は歩けなくなるので、そうなると前穂まで登る必要がでてきます。

 

さて、今朝も小屋を出て、まずは奥明神沢を登ります。

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奥明神のコルまでは標高差約670m。

上高地~岳沢小屋間とほぼ同じですが、傾斜が全然違います(笑)

まだ小屋からは雪渓を順調に登ることができます、途中、クラックが入り始めていますが、通行に支障は全然ありません。今月中は問題なく通れるでしょう。

(前穂ダイレクトルンゼのほうは2ヶ所雪が切れていますが、今日も2組ほどが利用されています、雪の切れた部分だけクリアすれば問題ないでしょう、念のためロープの携行をおすすめします)

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この奥明神のコルから縦走の始まりです。上高地側から登るのが一般的かもしれませんが、けっこう長い登りですから、岳沢から下りでの利用だと体力的に楽かと思います。

いきなりの岩壁の登りとなりますが、登りでの利用ならロープなくても大丈夫。下りの場合はちょっと微妙で、ロープを使って懸垂下降で下りる人も多いようです。残置の支点やロープがたくさんあります。

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ひと登りすると明神岳主峰(1峰)が目の前に現れます。

岳沢側からであれば主峰は楽々アプローチできるのです。(逆の上高地側からだと延々と遠い主峰です)

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主峰からは奥穂(左)や前穂(右)の眺めが最高です。

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岳沢を挟んでお向かいの西穂の山並みも一望。

また反対側には横尾~明神の梓川の流れが高度感をもって俯瞰できます。

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縦走の核心はここから・・・

お隣の2峰、3峰、4峰と、岩々の尾根が連続します。

まずは2峰の登りがコース最大の岩壁となります。

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ただ、主峰側からの登りならロープ無しで大丈夫。ただ、上高地側から来て、2峰の北面を下る時はロープ必須の懸垂下降となります。

明神岳縦走の難易度は例えて言うと、「西穂~奥穂」の縦走路に目印も鎖もないような感じでしょうか。ですので、西穂~奥穂を自分の実力で何度も通ったという方ならば、穂高の新たな一面をこの明神岳の縦走で体験してみるのはいいかもしれません。

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2峰から3峰と、慎重に岩場を下り、4峰まで来ると、主峰~3峰の明神3ピークがきれいに並んで見えるので、ここで記念撮影。

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反対側には5峰とその向こうには上高地が見えてきます。

岳沢側からの場合、下りベースでの縦走となるので、体力的に楽ですね。

ただ、やっぱり登って、登って主峰に到着という高揚感には勝てないでしょうか、それは「西穂~奥穂」の縦走も同じことで、体力的には下りベースとなる奥穂からの縦走の方が楽ですが、やっぱり西穂からゴールとなる北アルプス最高峰の奥穂高岳へ向かって、ジャンダルムを経由して辿っていくあの高揚感には叶わないのと同じでしょうね。

さて、5峰台地に到着です。

ここは山上の別天地、上高地を見下ろす、最高級の展望台です。

その昔、この場所に山小屋を立てたいとおっしゃった方がいらっしゃったそうです。残念ながら許可は下りなかったそうですが、もしここに山小屋があったらここでも働いてみたいですね。

眼下には上高地、そして、西穂~奥穂の素晴らしい眺めが最高の場所です。

 

さて、さて、楽しかった縦走もここまでです。

ここから上高地まで標高差1000mの下りは修行です。

特に中間あたりにはかなりシビアな狭い岩尾根の下りが待ち構えています。樹林帯の中なので、さほど恐怖感は感じませんが、落ちたらアウトです。

立ち木などのホールドはたくさんあるのでそこは慎重に下降してください。ここは下りよりも登りで木を掴みながらグイグイと登る方が楽かもしれませんね。

 

そんな岳沢~上高地、プラス4時間の寄り道も岳沢下部の「⑦風穴」で登山道に合流して終了です。

やっぱりちゃんとした登山道は歩きやすいですね。

 

どうぞ、我こそは!!という体力に自信があり、岩登りも大好きな人は今度の土曜日か来週の土曜日にでもどうぞ!!

5月19日はだいぶ予約が多く、間もなく満室となりますが、26日はまだまだ予約も少ないです。

 

「西穂~奥穂」はまだこの時期、稜線上の残雪が多く、通行はかなり困難ですが、明神岳縦走は、奥明神沢の雪渓を登り終えれば、あとは稜線上には雪もなく快適な岩稜歩きが楽しめますよ。