2019/09/10
台風15号は関東地方に大きな被害をもたらしたようですが、幸いにも北アルプスエリアは多少の雨・風程度で済みました。影響と言うと、関東から脱出できない人が多く、昨日(9日)の宿泊者がゼロになってしまったことくらいでしょうか。
そんな中、昨夜は10年来のお付き合いのある長野県消防防災航空隊の副隊長さんとその友人がプライベート登山で南岳にテント泊され、いつもは小屋で会話を交わす程度なのですが、親交を深めるいいチャンスだと思い、一緒に大キレットへ出かけてみました。
天気は期待の台風一過とはならず、午前6時に南岳小屋を出発する時は濃いガスの中でしたが、大キレットの岩場を下っているうちに徐々に視界も利いてきました。
長谷川ピークまでは先日ご紹介の通り、大キレットの中でも比較的歩きやすい部分が続きますが、この長谷川ピークから様子は一変。
青いウエアの友人さん(静岡県の消防隊員・初大キレット)はずいぶんと緊張されたそうです。
日当たりの良い南岳側の斜面は陽気な岩場の雰囲気ですが、長谷川ピーク~A沢のコル~飛騨泣きの区間は日当たりが悪く陰鬱な雰囲気があるうえに、「岩の墓場」とも称される滝谷の斜面は樹木も生えずに吸い込まれそうな急峻な岩場が続きます
大キレットで唯一ゆっくりと腰を下ろして休憩できると言われるA沢のコルから振り返ると長谷川ピークの奇怪な造形に圧倒されます。
(A沢のコルも北穂側からの落石には十分に注意してください)
ここから飛騨泣きまでは見上げるとほぼ垂直にしか見えない岩壁の登りとなります。上部の登山者が不注意に落としてしまう落石には十分ご注意ください
その岩場を登り、A沢のコル側を見下ろすと、本当に絶壁のような岩場の登りでした。
先ほどの長谷川ピークも角度変わって見えて、ますます痺れます
霧の流れる南岳と長谷川ピーク、自分の辿ってきたルートのギザギザ具合を振り返るとたまりませんね。
ここで再び霧に包まれましたが、飛騨泣きのこの岩峰は霧にむせぶくらいのほうが異様な感じが増長され、ますます痺れちゃいます
とはいえ、飛騨泣きは岩も安定していて、鎖や足場もしっかり整備されているので落ち着いていけば問題なし(北穂から下る場合は足元見えずに少し怖いです)
この太い鎖のトラバースを過ぎれば危険な岩場も終了、あとは北穂まで比較的容易な岩場のみ。(ただし、上部の登山者の落とす落石には注意が必要です)
また霧が晴れ、飛騨泣き(左)と長谷川ピーク(中)が見えてきました。西穂~奥穂間の間ノ岳並みのギザギザ感、たまりません。
登山道が登りからトラバースに変わってきたら北穂まではあと200mです。そして残念ながらこれ以上天気が良くなることはなく、狙っていた霧の流れる大キレットと槍ヶ岳の姿をカメラの収めることはできませんでした。
北穂高小屋では1時間半ほど休憩して霧の晴れるのを待っていましたが、このブロッケンと大キレットがせいぜいでした。
でも、やっぱり大キレットは3時間延々と岩場の続く楽しいコースです。今年も行くことができて良かった良かった。
さて、今度の3連休は天気もおおむね良さそうで、小屋のほうもたくさんのご予約をいただいています。当然、大キレットに挑む方もたくさんいらっしゃることでしょう。今日のように人がほとんどいない大キレットは快適ですが、混みあう大キレットはそれはだけで難易度も増し、すれ違いなどに余分は時間を取られます。余裕のある計画を立てるようしてください。また、人が多ければ落石の危険も高まります。ヘルメットは必須、また小さな落石が手に落ちてくるケースも多いので甲の部分がぶ厚めの手袋をされることをお勧めします。